園裡の虎

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Kifu for Java は柿木義一氏の著作物です

第1図

第1図

第1図より
18歩、16玉、17歩、同玉、15飛、同桂、71角不成、44歩にて第2図

左側の後半部分については原理図のところで説明した。
いよいよ原理図が、本図にいたるまでを見てもらおう。
まず、序奏で銀と飛車の消去から角を不成で入る。
これに対する、44歩合が「時間差打診」である。

なぜ44歩合なのかは、後述して以下の展開を見ていこう。
詰方は、これを不成とは取れないので、勢い成るしかない。
そこで突然馬鋸が発生する。

第2図

第2図

第2図より
同角成(イ)16玉、43馬、17玉(ロ)53馬、16玉、52馬、17玉、
62馬、16玉、61馬、17玉、71馬にて第3図

(イ)で26桂合は18歩、16玉、43馬、25銀、同馬、同歩、17銀まで。
また26銀合は18歩、16玉、26馬、同桂、17銀まで。

(ロ)で34桂合は、17歩、同玉、18歩、16玉、34馬、同歩、28桂、
同金、17歩、同玉、28金、16玉、17金打まで。
また25合は、同角、同歩、同馬、27玉、37金、同玉、48金、27玉、
28金まで。
かくして、馬鋸の登場となり、71まで行く。

第3図

第3図

第3図より
16玉、25角、同歩、17歩、27玉、37金、同玉、28金、46玉、
37金打、57玉、93馬にて第4図

この右側の接合部が中々うまくいかなかった。

@馬鋸が成立すること
A持駒の変動なく、57まで玉を持っていくこと
B原理図に対する余詰が発生しない(右側が独立すること)

これらを、駒数の制限を受けながら作るのは、至難の業だった。
36角と27香の関係が、25角と出ると、27の香が浮くのが秘訣だ。
そうして第4図。

第4図

第4図

この第4図と下の変化図を見比べていただきたい。
変化図へは、第2図の44歩合をせずに16玉と逃げた場合こう進展する。
つまり、第2図で44歩合の代わりに16玉との逃げ、以下同様に左辺の57まで
追いかけてきて、変化図となる。

第4図以下は、

75角中合、同馬、67玉

となる。(第五図)
以下の順は、原理図で説明したとおり展開する。

変化図

変化図

また、44歩中合をしなかった変化図では、93角不成に対して、
84歩以下の攻防になるのは、原理図のところで説明したとおり。
つまり、

93角不成、84歩中合、同角成、75角、同馬、67玉

となって、やはり第5図に到達する。
しかし、手数が違う。
44歩合の方が断然長い。
そこで、本来なら原理図で行う84歩の打診を、44歩と時間差で打診する。
結果として、馬鋸を強要した分、こちらのほうが長い。

第5図

第5図

出題時のわたくしたちの予想通り、さまざまな中合を見落とした人たちが
続出した。
しかし、誤答者を含め、誰もが同じ詰上がりに到達する前代未聞の作品と
なった。
わたくしたちはこれを「二度おいしい作品」と呼んでいた。
解けた喜びと、やられた喜びである。
今までの詰将棋は、解けるか解けないか、ただそれだけである。
本作には解ける喜びがある。
しかし、正解はどう解いたかであって、それに最後まで気がつかない者も
それなりに楽しめたのである。

どうだろうか、こんな憎めない奴ほかにいるのだろうか?