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カルマの法則

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第1図

第1図

第1図より
94歩、同玉、34飛成、44飛にて第2図

黒竜江龍鋸作品第二弾。
「カルマの法則」と名づけられたこの作品はとんでもない趣向を実現した。
図巧第1番はあまりにも有名な作品だ。
下の参考図はその13手目の局面だが、ここからこの飛打に対して25飛合、同飛、
同角、95馬、76玉、26飛、36飛、同飛、同角・・・と角を移動させていく。
狙いは、56の地点にまで移動させ、後の92歩を打歩詰にしないためだ。
実に雄大な構想作品だが、本作は相手が何と馬である!
馬に接近して飛を打てば、同馬と取られてしまう。
それは普通に考えて不可能であろう。

参考図

参考図

参考図より
25飛合、同飛、同角、95馬、76玉、26飛、36飛、同飛、同角・・

伊藤看寿の図巧第1番は、長編詰将棋を志すものだけでなく、広く知られている
雄大な構想作品。

時として、この作品のバリエーションや、似た構想作品は作られてきた。
しかし、本作のように「飛⇒角」の関係を「龍(飛)⇒馬」の関係に置き換える
ことなど、夢想だにしないことではなかろうか。
それを可能にしたのは、まず何といってもこの龍鋸発生原理だろう。
超効率省エネルギー発生原理だからこそ、空間にも余裕があり、収束へのバトン
タッチもスムーズ。

第2図

第2図

第2図より
同龍、同歩、54飛、93玉(イ)53飛成、94玉(ロ)44龍、93玉、33龍、
94玉、24龍にて第3図

解説が前後するが、第2図の44飛合で銀合は、44同龍、同歩、85銀、同香、
同金、93玉、84金、82玉、83香まで。
また(イ)で84合駒は、85金〜94歩〜84金で簡単。
(ロ)で83飛(金銀の合駒は94歩〜85金〜84金で簡単)は94歩、同玉、
83龍、同香、74飛、84歩、85金以下詰み。
実に、簡潔に龍鋸が発生する仕組みがお分かりいただけるだろう。

そうして龍は馬に接近していくのだが・・・

第3図

第3図

第3図より
93玉、13龍、23飛(ハ)にて第4図

さて、この24龍を同馬と取ったらどうなるのだろうか?
24龍、同馬以下、95金、同玉、96歩、同玉、41馬、85銀、87銀、95玉、
86銀、94玉、85馬、同香、同銀、83玉、84銀打、82玉、83香まで。
つまり、盤面の詰方51馬が41馬と銀を取る手に、玉方は常に馬の利きで
これを遮断しないと逃れることが出来ない仕組みになっている。
また(ハ)で飛合は、これをもし23歩合とすると、以下94歩、同玉として
@14龍、24銀(X)同龍、同歩、85銀、93玉、84角以下
A95金、同玉、96歩、同玉、41馬、85銀(Y)87銀、95玉以下
飛合だと、@には(X)で24歩合、Aには(Y)で63銀合、で逃れる。

第4図

第4図

第4図より
同龍、同馬、43飛、94玉、44飛成、93玉、33龍、94玉、24龍、34飛、
同龍、同馬、54飛、93玉、53飛成、94玉、44龍、93玉(ニ)33龍、
43飛(ホ)同龍、同馬にて第5図

飛合の意味は、結局9筋に対して行われる遠隔操作を飛の利きで未然に防ぐため。
そうした意味付けで同じように、龍鋸+飛合を繰り返す。
(ニ)や(ホ)で同馬と取るのはすべて、先ほどの変化同様、41馬に
対して玉方の馬による合駒が利かないので早詰となる。
それにしても、たった二つのエンジンでこの見事な趣向が成立するとは!
一つは左辺の龍鋸発生原理、もう一つは上部の馬や銀。


第5図

第5図

第5図より
94歩、同玉、44飛、54飛、同飛、同馬、74飛、93玉、73飛成、
94玉、74飛成、93玉、83香成、同香、94歩、82玉、73龍にて第6図

この第5図で今までと同じように、63飛〜64飛成〜53龍〜44龍は×
53龍に同馬と取られ、41馬の筋に合駒が利くから。
従って、この時だけは94歩〜44飛とする。
そうして、馬を54まで連れてきた。
なぜここまで連れてくるのか、その理由がだんだん明らかになってくる。
本作に使われている龍鋸発生原理はこの収束への入り方が簡単。
詰方の香を成捨て、歩を打つと「外」へ出すことが出来る。
作る側から見て、「差を出す」のが楽なので助かる。

第6図

第6図

第6図より
同玉、63成桂、同玉、41馬にて第6図

左図の73龍が絶妙手だ。
これで、左辺と上部がつながって、収束が可能となる。
長編を作っていると、困るのが構想をつむぎだす部分と収束の部分との接合だ。
これが双方をうまく内包する形で、設計の段階から出来てればいいが、中々
そううまくはいかない。
黒田氏の収束は、構想と絡んでいるケースが多いので人一倍苦労していた。
本作も、差を出す仕組みは左側の龍鋸発生原理と上部の詰方馬・銀・成桂と玉方銀。
これの配置による制限を受けての、収束なのでなおさら大変だ。
こういった狭い空間で様々な制約を受けての収束つくりはわたくしたちの「仕事」だった。

第7図

第7図

第7図より
73玉、74銀、82玉、83銀成、81玉、71香成、同玉、72銀成、同馬、
同成銀、同玉、64桂、82玉、71角にて第8図

左図で、なぜ玉方馬を54まで連れてきたのか、一目瞭然であろう。
看寿は角を打歩詰打開のため、黒竜江は退路塞ぎのためだった。
ここからは、黒田氏にしては珍しく、駒を捌いている。
「意味づけの局面」の外がわに出られないので、仕方がないのだが。
それにしても、攻方龍と玉方馬を両方消してしまう見事な収束だ。
こういう、「箱の中の収束」は狙っていないと中々出来ない。
上田吉一氏や若島正氏の作品に人気があるのは、こういった「箱」の
中でものがたりが完結するからだろう。

第8図

第8図

第8図より
同玉、73香、82玉、72香成、83玉、74馬、94玉、85金、
93玉、84金まで85手詰み

最後に、自由になった詰方馬で収束を向かえ大団円となる。
この奇抜でしかも創作何度ウルトラC(古くさい言い回し・・)の
作品でも中々評価されなかったのは不思議だ。
そして、この作品以降わたくしとコンタクトを取るまで、黒田氏は
作品を発表していない。
「虎バサミ」はわたくしと会わなかったら誰の目にも留まることが
なかったかも知れない。
現在の目で見て、この「カルマの法則」どのように評価されるのだろうか?