第1図
第1図より
17飛、同玉、28銀、16玉、27銀、25玉(イ)47馬、65角(ロ)
にて第2図。
奇妙な作者名だが、これも「馬賊戦記」からの引用。
本作は構想作品だが、あれもこれもと盛り込んだら、次々と余詰めが出て
それ消していくうちに、とんでもない悪形になってしまった。
構想と配置が合っていない無理作りをするとこうなる。
それでも珍しい構想なので、修正して載せることにした。
初手は何とまさかの飛車打ち。
変化(イ)ー25玉で17玉は、18銀、同玉、19香、以下馬が動いて詰む。
実を言うと、盤面48銀、49金はこの変化のためだけの配置・・・
変化ロ図
変化ロ図より
35歩、47飛成、26香、同と、同銀、16玉、17歩、同龍、同銀、同玉、
27飛、16玉、76飛、15玉、17飛まで。
左の図は、作意65角を省いていきなり45飛中合とした局面。
45飛の意味は、35歩と突かれた時に、47の馬を取る意味である。
あいにく香は品切れだが、これが初手飛車打ちの効果である。
角中合を省くと、以下盤面75の飛車が最後に76飛とと金を取って詰む。
この最後の76飛をさせないための角中合。
しかし、この角の中合のために、創作上はえらい苦労をすることになった。
何しろ、角を手持ちに様々な手段が生じるからで、それを打ち消すのは大変だった。
紛れ1図
紛れ1図より
35歩、47角成、35歩、75と、26香、同と、同銀、16玉で打歩詰
前掲の変化で角中合が出現することになった。
これを、もし取らずに35歩は、47角成以下左の図のように
打歩逃れとなる。
この5段目の中合は、すべて47馬を取る手でなくてはならない。
そうでなければ、35歩と突かれて終わってしまう。
ただし、55桂合は、同飛、45飛の時に35歩、47飛成、17桂があるので
成立しない。
第2図
第2図より
65同飛、45飛(ハ)にて第3図。
創作の動機はこの局面にあった。
前述したように、(ハ)で45香と合駒されると、作意同様に進み
47が龍(または飛)ではないので打歩逃れとなる。
もちろん、この45飛中合に同飛はない。
34玉として逃れであるが、これがまたむずかしい。
近代将棋掲載図面では、それも余詰だったようだ。
ここで、45飛中合をさせて、その後打ち歩打開をする。
さかのぼって、そのための初手不利先打(?)だったわけだ。
第3図
第3図より
35歩、47飛成、34角(A)にて第4図
>
作意は、45飛を取らずに35歩。
47飛成として、ここからが面白い。
作意は34角でこれで角⇒歩の交換となる。
要するにここからの局面においては、角よりも歩のほうが役に立つ。
だから、34角という手段が成立する。
ではもし、この34角をせずに、そこで26香以下進めるとどうなるのか?
下の図は、その紛れを示したもの。
紛れ2図
紛れ2図より
26香、同と、同銀、16玉、17歩、同龍、同銀、同玉にて紛れ3図
詰将棋を作るときに、一番苦労するのが、紛れをどう処理するかだ。
誰も作ったことがないような詰将棋を作る、それは誰も踏み入れたことのない
世界に入ることである。
ギリギリの世界でのことだから、紛れが詰んでしまうことがしばしばある。
これを何とか、逃れさせるのが技量となるのだが、構想の段階で図化するときの
ことを、考えておくことが大事だ。
そうすると、駒数が少なくすっきりと表現できることが多い。
それを無理やり作ると、本作のようなことになる。
角を温存して、飛を奪うが・・・
紛れ3図
紛れ3図より
28角、16玉、17飛、25玉、39角、26歩、同香、同玉、37銀、25玉
36銀、26玉、27飛、15玉、16歩、同玉、17歩、15玉にて逃れ。
左図で飛角を持っていると言うことは実に厄介。
事実、近代将棋発表時は、この紛れで詰んでしまった。
この紛れ手順中、最後の15玉に、48角として詰んだ。
そこで、今回の修正は58と追加、なんとも安易な方法だが、他に
詰め方39玉を置いてみたり、玉方19金で、変化紛れを処理できないか
いろいろ試したけれども、これ以上図面を簡素化するのは無理だった。
え?「39と」は何のためにあるのかって?
これがなければ、この紛れも元々なかったはずなのに・・
紛れ4図
紛れ4図より
17香、同玉、28銀、16玉、17飛、25玉、47馬、45香、35歩、47香成、
37銀右、26歩、36銀
左図は、初形から「玉方39と」を除いた局面。
するとご覧のように、簡単な余詰。
詰め方の「29香」を自由にしておくと、こういう余詰めが生じる。
対して、39と配置・・・
こうやって、一枚一枚増えていく、何だかいたちごっこのような創作。
そこまでして、表現する価値があるのかは、もうわからない世界だ。
ただし、多少込み入った感じは変化と紛れに出ているので、救われているか。
解答者との勝負が主眼だった、当時を振り返ると、修正に意味があるか疑問。
第4図
第4図より
同と、同歩、65歩にて第5図。
丁々発止と続いた空中戦も終わって、いよいよ収束。
実はこの問題には、解答者との競走と言う観点からすると、疑問が残る。
それは、前述した角中合をしない手順である。(変化ロ図のところ)
これが、歩余りの詰み。
これではいけない、誰も嵌らない。
そこが命だったのに、構想上無理だった。
何と言ってもそこが一番悔いの残る点で、今回どうしても直したかったが
出来なかった。
第5図
第5図より
26歩、同と、同銀、16玉、17歩、同龍、同銀、同玉、
27飛、16玉、17香
あとは、先に読んだ順で詰ますだけで、特にむずかしいところはない。
今回、失敗作だった本作を並べてみて、実にムキになっている感じがする。
そこまでして表現するか!
なんともほほえましい限りだが、黒田氏をして、何とか実現したと言うのが
正直なところだろう。
それにしても、若さにかまけて精錬のかけらもないが、異様な雰囲気だけは
伝わっただろうか?