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千山

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Kifu for Java は柿木義一氏の著作物です

第1図
←動く将棋盤の名前  第1図より
 36香、35飛(イ)にて第2図

  本作に寄せられた解答136通、正解者はわずかに19人。誤答率実に86%。
  解答者と対峙することを標榜していたわたくしたちの大勝利だった。
  「園裡の虎」の項でも触れたが、いろいろ手数が分かれて、大勢の解答者が
  解けなかったのではなくて、解いたけれど間違っていたと言う点で新しい。
  難解作と言えば、筋にすら入らないものが多くあるが、本作は、たいていの
  人がすぐに回転を始められる。
  ところが、回転が始まってすぐに落とし穴があって、何と半数以上の人が
  ここで落ちた、2手目何と飛合なのだ!
  誰だって、普通は香合を考えるだろう、その順は次に。



変化1図
←動く将棋盤の名前  変化1図より
 36香、35香、同香、43玉、55桂、54玉、32馬、55玉、65馬、46玉、
 47馬、35玉、37香にて変化2図。

  感覚的には、持駒変換の際の延命策に似ている。  
  後に同じように飛合が出てくるが、それとは意味が少し異なっている。   
  香合とすれば、変化2図までは、変化の余地はない。
  ここで、桂合と香合に分かれる。
  では飛合はというと、これが後に示す変化で詰む。
  最初の完成図面(未発表)は何とこの36飛合で千日手で逃れとなった。
  その筋を発見したのは素田黄氏だった。
  まさに盲点で、それに気が付かなければ、不詰問題を出すところだった。



 

変化2図
←動く将棋盤の名前  変化2図より
 36桂、同馬、34玉、14馬、35香、同香、43玉、32馬、52玉、41馬
 43玉、55桂、54玉、32馬、55玉、65馬、46玉、47馬、35玉⇒にて第5図

  まず36の地点での桂合から調べよう。
  桂合から14馬と空き王手して、今度は香か飛だが、まずは香合から
  同じように、同香と取り、43玉に、52馬が利く。 
  41馬に、43玉とするが、62玉と逃げたらどうするのだろうか?
  この変化は後述するが、要するに桂馬を二枚持てば、62玉に74桂〜
  85桂が実現して、詰む仕掛けになっている。
  そうして、52歩が消去され、回転して戻ってくると、アーラ不思議、作意
  48手目(第5図)と同一局面になっていて、16手早い。



変化2図
←動く将棋盤の名前  変化2図より
 36桂、同馬、34玉、14馬、35飛、同香、43玉、32馬、52玉、41馬
 43玉、55桂、54玉、32馬、55玉、65馬、46玉、47馬、35玉⇒にて第6図

  途中の35の地点での合駒が香から飛車に変わっただけで、後は同じ。
  そうして回転すると、今度は作意64手目の局面(第6図)と同じになる。
  そして手数は32手早くなる。
  このように、合駒の選択を間違えると、途端に作意同手順の早詰みとなる。
  今までの詰将棋は、間違えるとすぐにわかる。
  詰手順がよほど巧妙な偽作意でもない限り、手順がおかしいとバレる。 
  ところが、本作や「園裡の虎」は同じ詰上がりになるので、わからない。
  解けた方も満足、罠にかけた方も満足。



再掲変化1図
←動く将棋盤の名前  再掲変化1図より
 36香、同馬、34玉、14馬、35飛(X)同香、43玉、55桂、54玉
 32馬、55玉、65馬、46玉、47馬、35玉⇒にて変化3図

  今度は36の地点の合駒が香の場合を調べよう。
  (X)の合駒が桂ならば、桂合⇒香合とした先の変化と同じになる。
  従って、今回は(X)の合駒は飛の時だけ調べればよい。
  このように本作は合駒の組み合わせが常に問題となる。
  しかも、不利合駒の要素も加わっているので、飛や香・桂の優劣が見えにくい。
  わかっているのは、桂を二枚もつと、32馬〜41馬で52歩の消去
  (5筋に歩を打つため)が可能になること。
  さて一回転して変化3図となるが、37香に、香合と桂合がある。



変化3図
←動く将棋盤の名前  変化3図より
 36香合、同香、25玉、15飛、同玉、37馬、25玉、26馬、14玉、
 15歩、23玉32銀不成、22玉、21成銀、同馬、23香、12玉、
 21銀不成、23玉、14角、22玉、32角成まで

  変化3図のように、持駒が飛香となる図は常に詰む。
  まずは香合だが、限られた空間での処理をご覧あれ。
  解く方は、「あ、こういう順で詰むのか」でお終いだが、
  作る方はそうはいかない。 
  狭い空間で「差」を出さなければならない。
  これが結構厄介で、本作の制作にはホトホト手を焼いた。
  21成銀〜23香〜21銀不成の順を見つけた時は、嬉しかった。
  この場所で、桂も香も詰ますのは至難の業だった。



変化3図
←動く将棋盤の名前  変化3図より
 36桂合、同香、25玉、15飛、同玉、37馬、25玉、26馬、14玉、
 15歩、23玉、32銀不成、22玉、14桂まで

  今度は、桂合だがこちらの変化は早く詰む。
  むしろ、こちらの変化を詰ますように作ってから、香合を考えた。
  本作には三つの舞台がある。
  一つは、主要回転部。
  もう一つはこの変化を出す右上の部分。
  そして最後は、桂2枚持つと52歩が消去可能な左上の部分。
  その最後の部分は、収束にも関係している。
  どれもこれも最善の配置と信じている。



第2図
←動く将棋盤の名前  第2図より
 同香、43玉、55桂、54玉、32馬、55玉、65馬、46玉、
 47馬、35玉にて第3図

  長い変化の解説で、逆に本手順が浮き彫りになった。
  まさかの飛合から、一回転、第3図となる。  
  本作は、常に第3図のような局面で、37香(飛)と打つ手と
  14馬の空き王手に対してそれぞれの合駒を何にするかが、
  問われている。
  まさにパズルそのものではなかろうか?
  こうやって、解答者と対峙してなおかつ、詰む詰まないではなく
  正解手順と紛(まが)う陥穽が用意されている。



第3図
←動く将棋盤の名前  第3図より
 37飛、36香、同馬、34玉、14馬、35香、同飛、43玉、
 55桂、54玉、32馬、55玉、65馬、46玉、47馬、35玉にて第4図

  さて、第3図から早速合駒が問われる場面となった。
  玉方には桂香香の合駒があるが、二回の合駒(36と35の地点)のどちらかに 
  桂合をすると、52歩を消去されてしまう。
  この順については、次の譜で。
  と、いうことで香香の合駒と決定する。
  このように、合駒の組合せを考えていくことが本作の妙味である。
  こうして改めて本作を見ると、「将棋の姿を借りた」パズルという黒田氏の  
  詰将棋に対する見方が浮き彫りになっているのが感じられる。



第4図
←動く将棋盤の名前  第4図より
 37香、36桂、同馬、34玉、14馬、35桂、同香、43玉、
 32馬、52玉、41馬、43玉(ロ)55桂、54玉、32馬、55玉、
 65馬、46玉、47馬、35玉にて第5図

  さて、今度は何を合駒をするか?
  第4図での玉方の持駒は、飛桂桂。
  まず、36の地点で飛合はない、変化3図で36に香合した局面と同一だから。
  すると、36は桂になる。
  では次の35の合駒は?
  ここも、飛合とすると、譜の手順同様、52歩を消去(桂が二枚あるので)後
  回転して戻ると64手目の局面と同一になって16手早い。
  さて変化ロで62玉と逃げるとどうなるのか・・・



変化4図
←動く将棋盤の名前  変化4図より
 74桂、73玉、85桂、83玉、93歩成、72玉、73香まで

  桂二枚をもつと、52歩が消去される。
  なぜなら、41馬とした時に、62玉が詰むからだ。
  作るほうは、桂香香のときに詰まないで、かつ桂桂香が詰むように
  しなければならない。
  しかも、ここは収束が絡むので、「差」を出すのに苦労する。
  これには、後日談があって、黒田氏とわたくしは別々の場所で、
  同じ配置を考えていて、お互いに見せ合って互いに唖然とした。
  わたくしは黒田氏に創作技量が近づいて呆然。
  黒田氏は弟子に同じ構想を持たれ、まさかの思いだったろう。



第5図
←動く将棋盤の名前  第5図より
 37香、36桂、同馬、34玉、14馬、35飛、同香、43玉、55桂(Y)54玉、
 32馬、55玉、65馬、46玉、47馬、35玉にて第6図  

  第5図となって、玉方の持駒は飛桂香。
  先の変化3図に見るように、36の地点に飛合はない。
  では香合は?
  香合以下、同馬、34玉、14馬、の時の合駒に困る。
  そこで、飛合は回転して、37香に桂も香も詰む(変化3図)
  従って、桂合となるがそれは収束に入ってしまう。
  そこで36の地点は桂合となるが、次の35飛が「不利合駒」と呼ばれる手筋だ。
  これなら、(Y)で32銀不成、54玉、56飛に、「55香」を用意している。
  第1図の飛合をクリアーしながら、ここで躓いた人も多数いた。



第6図
←動く将棋盤の名前  第6図より
 37飛、36香、同馬、34玉、14馬、35香、同飛、43玉、55桂、54玉
 32馬、55玉、65馬、46玉、47馬、35玉 にて第7図

  さて、不利合駒が登場して第6図となるが、またここで悩ましい。
  例によって玉方の持駒だが、飛桂香香。
  香香と合しているが、飛は早いので36桂合が考えられるが、
  これは次譜で変化として取り上げる。
  発表時の近代将棋における森田氏の解説にこの順がすっぽり抜けているのが
  不思議だ。
  実は、余りにややこしい作品なので、近代将棋の発表の前に、渋谷にあった
  龍王亭ビルの中の将棋道場で森田氏と、黒田氏を伴ってお会いした。
  森田氏が楽しそうに解析していたのが、今は懐かしい思い出である。

  

変化5図
←動く将棋盤の名前  変化5図より
 36馬、34玉、14馬、35香、同飛、43玉(Z)32馬、52玉、41馬、43玉、
 32銀不成、54玉、56香、55香、46桂、同歩、55香まで  

  左の図は、第6図から37飛、36桂合とした局面。
  この変化は、35に飛車がいるときにだけ有効な手段で解決する。
  32馬〜41馬に対して62への逃路は、桂二枚持っているので封鎖されている。
  そこで、やむなく、54玉と上へ逃げるが、56香〜46桂で、見事に
  盤面「35飛」の特殊状態で詰む。
  なお(Z)で35同玉は、改めて37香と打ち、合駒を稼がれて早く詰む。
  ここも製作過程で悩んだところで、こういうところをきちんと整理していかないと
  千日手になったり、非限定だらけになってしまう。



第7図
←動く将棋盤の名前  第7図より
 37香、36桂、同馬、34玉、14馬、35桂、同香、43玉
 32銀不成、54玉、56香、55金 にて第8図

  第7図となって役者が揃った。  
  桂桂の合駒だが、36へ飛・金は例の変化3図のように詰み。
  35の飛合は次譜で解説するが、早詰み。
  そこで、43玉に32銀不成と収束に入る。
  54玉のところ、52玉は41銀不成、51玉(43玉は32馬まで)52歩、62玉で
  変化4図と同じように桂二枚持っているので詰む。
  そうして、56香に55金。
  この金合で飛合は下の変化に良く似た順で詰む。



変化6図
←動く将棋盤の名前  変化6図より
 35香、43玉、32銀不成、54玉、55歩、同玉、
 56香、同玉、47馬、66玉、76飛、55玉、56飛まで 


  今までの変化の対応であれば、飛合に対して回転して、
  変化3図のような詰ましかたをするはずである。
  実はこの飛合には裏話があって、当初この変化は一回転した後に 
  変化3図のように詰ましていたが、何とこれが同手数駒余らず。
  ところが落胆したわれわれに、光が指す。
  75とが神の配牌(黒田氏談=彼はマアジャンが大好きだった)
  図に見るようにあっけなく早詰みだったのである。
  32銀不成に52玉は、41銀不成、62玉、52飛、73玉、85桂、83玉、93歩成まで。



第8図
←動く将棋盤の名前  第8図より
 同香、同玉、56歩、46玉、47金、35玉、36金、34玉、43銀不成、同玉、
 55桂、52玉、41馬、62玉、63桂成、71玉にて第9図

  何とここから、金による回転が始まる。
  キーポイントはいうまでもなく52歩消去によって初めて可能になった
  56歩だろう、これが打てるので、次の43銀不成〜55桂が56歩に支えられ
  玉を左辺に追い込むことに成功する。
  ここまで、7回転。
  まさに回転体だが、単純なハガシとか駒変換以外での論理性を以って
  ここまで回らせるのは至難の業ではなかろうか。
  



第9図
←動く将棋盤の名前  第9図より
 72歩成、同金、同成桂、同玉、84桂、81玉、82歩、同玉
 93歩成、同玉、92金、83玉、74馬、94玉、85とまで123手。

  この狭い場所で、収束をきちんと割り切れるように作ったのが自慢。
  馬を消す収束も案としてはあって、もちろんそれも可能だが、
  左下へ追い出すために、配置も広がり、手数もいたずらに長くなる。
  収束をきれいにするためには、それもあるかと思ったが、本作は
  回転をその複雑な論理性で支えるのが特長であり、まさに現代的な
  作品に仕上げたかった。
  それでも、馬を活用しての収束はまあまあではなかろうか。
  現在の目で本作を見ても、十分鑑賞に堪えられると思うがどうだろう。