第1図
第1図より
33角不成(A)16馬(イ)にて第2図
長編と長編の製作の間に、ちょっとした短編をよく作った。
気分転換のためであった。
本作もそういった短いもので、森田手筋に限定打を取り入れて作ってみた。
初手(A)のところ成るのは、17とくらいで詰まない。
持駒に歩があれば不成としたものとは近藤郷氏に教わった。
そうして16馬がドキッとする、離れ業。
要は、34から逃げ出したいのだ。
(イ)で16合を打つのは、15歩、23玉、22角成、24玉、25歩、同馬、33馬まで。
銀合なら詰まないが品切れ。
第2図
第2図より
16同香、23玉、45角(B)まで第3図
馬の移動中合!を取って、さあどこから角を打つのか?
何と、取られちまうところに打っちまうんだね。
なぜだろう?
まず67角あたりから打ってみるとしよう。
すると56歩と中合する。
これは取る一手で、以下34飛、15角、14玉、47角、36歩、23桂成・・・
同じように進むと、あーら47飛が打てないじゃないの!
89や78から打ったって、56歩と中合するから同じこと。
第3図
第3図より
34飛(ロ)15桂、14玉、36角にて第4図
(ロ)で34桂合は22角成〜33馬、34金合は、22角成〜25歩〜33馬。
そこで飛合と成るが、これは打歩詰。
そこで15桂〜36角が習いある筋で、これを「森田手筋」という。
言葉で表せば、合駒を強要して、打歩詰になった局面で、その合駒を強要した駒を
原型のまま消去して打歩詰を打開する手筋だ。
何でも名前が冠されるのは名誉なことで、「森田銀杏氏」は歴史に残る名伯楽だ。
あまり世間に認められなかった?われわれをずっと支えてくれたところがある。
この局面では、「合駒を強要した駒」は角でこれを原型のまま消去する。
第4図
第4図より
同歩、23桂成、同玉、24歩にて第5図
この「森田手筋」はいくつものバリエーションがあって、これに関しては
金子義隆氏の「ふしんなぺーじ」(リンク集からいけます)の詰将棋雑感の
「森田手筋」に掲載されている。
実は本作もそこに掲載されている。(「創作や修正」をご参照)
さて、原型のまま角の消去に成功して、収束。
第5図
第5図より
同飛、22角成、34玉、33馬、45玉、46歩、同玉、
24馬、同龍、47飛にて詰上り図
以下の手順は、仕上げの順で47飛までの詰上がりで角の邪魔駒化を
防いだのがよくわかると思う。
こういった、短編の製作は頭のトレーニングには最適で、本作も
「素田黄趣向作品」と「園裡の虎(原理図)」の間に作られた。
本作の場合、森田手筋や中合で呼び寄せるための舞台が大掛かりに
なってしまったので、短編にせざるを得なかった。
長編にするには不向きだった。
詰上り図
本作は発表時余詰めだった。
盤面12香を馬でとって左辺に追い回す順だった。
今回、わたくしが修正したのだが、先の「ふしんなぺーじ」に余詰めである
にもかかわらず取り上げていただいて修正案まで頂いていた。
その辺の話は「創作と修正」に取り上げたので、そちらも見ていただきたい。
それにしても、初形17枚のうち不動駒12枚、わたくしたちの作品がいかに
「捌かない」詰将棋であるか。
理想手順のための舞台つくりなのである。
反対に言えばよほどの妙味がないと、大駒が残ったり、舞台が残ったりするので
解後感が悪いと言われるが、実はそこはあんまり気にしていなかった。