「衛星の棲家」原理図


わたくしたちの詰将棋としては、
かなりやさしい作品。

出来れば自力で解いてから、
下の解説を読んでほしい。

なあに、手数はホンの19手。
問題は、飛車をどこから打つのかだが・・・














原理図

原理図より
38飛にて第1図

1981年、いよいよわたくしたちの作品が詰パラに掲載される。
怪しげな詩と作品。
当時の鶴田主幹の要望もあって、多少時代錯誤で扇情的な修辞がされている。
題して「衛星の棲(すみか)」
本作はその原理図である。
この原理図から、気が変になるほどの大量の紛れを含んだ「衛星の棲」に
なっていくのかを、いろいろ推察されるのも、また一興。
さて、原理図は初手どこから飛車を打つかだが・・・

第1図

第1図

第1図より
34桂にて第2図

まず、適当なところから飛車を打ってみる。
例えば、35あたりからか・・・
対して、42あるいは41へ逃げるのは、大駒の威力で詰む。
つまり原理図から、35飛、42玉、以下

31角成、52玉、32飛成、42香、同馬、63玉、65飛、74玉、
64馬、84玉、82龍、94玉、95香まで


よって、左辺への逃路に関しては大丈夫なので、問題は右側だ。

変化1図

変化1図

原理図より
38飛、22玉、14銀にて変化1図。

さてその問題の右側だが、玉方がなにもしないで、22へ逃げると・・・
14銀と開く手に困る。
これに対して、12玉とさらにかわすのは、23銀成、11玉、18飛まで。
だから左の図のように、28の地点に何かを打って、飛と香をダブらせる。
前に進む駒を28へ合するのは、以下同香、12玉、23銀成、11玉の時、
取った駒を打って詰み。
さりとて、28角合も、同香、12玉、23銀成、11玉の時、22角でだめ。
しかし、28桂は禁手なので・・・

変化2図

変化2図

原理図より
38飛、37桂中合、同飛、22玉、14銀、27桂中合、にて変化2図

だったら、飛車を桂で吊り上げて、後に飛と桂の焦点を8段目ではなく、
7段目にしようというのが、変化2図の考え方だ。
14銀と開いた時に、飛と香の焦点が28⇒27へ移っている。
そこで、27桂と二発目の桂中合が飛び出す。

しかし待てよ、だったら7段目から4段目までどこでもいいじゃないか?
あ、そうか、以降の手順のことを考えて、38飛車には34桂中合なんだ!
これなら、香が邪魔ですぐには桂が打てないぞ・・・・

第2図

第2図

第2図より
同飛、22玉、14銀、24桂、同香、12玉にて第3図

以上の情報を基に、正しい手順は、図のように34に中合となる。
これなら、第3図となったときに、24桂が打てないために、香を捨てる順が
必要となる仕組みだ。

実はこの問題、黒田紀章氏がわたくしに最初に会ったときに、テストと称して
出された問題で、何とか解けたからよかったものの、不正解だったら、「般若
一族」もなかったかも知れない。

第3図

第3図

第3図より
23香成、11玉、12成香、同玉、24桂、22玉、31飛成、同玉、
32飛、41玉、33桂まで19手詰み

最初の図は、玉方43歩、の他に52歩・62歩(いずれも玉方)があったが、51香一枚で
良いことがわかって、この図に出会ってから、実に27年ぶりに駒が一枚減った。
何ということはない話だが、これがうれしくってしょうがない。
しかしそれをわかって喜んでくれる、黒田氏はもうどこにいるのかわからない。
この図が、「衛星の棲」になっていく過程は、恐ろしい。
とにかく紛れが多くて、解答者はさぞかしくたびれたことだっただろう。
しかし、検討者であったわたくしの苦労を想像してほしい。
それはまた別稿で。